三門久美子×吉村光弘 ダイアローグ7
●パートナーのサポートと協力が不可欠
吉村:男性は自分で出産することそれ自体は出来ませんけど、妊産婦さんの「パートナー」にお伝えしたいことはありますか?
三門:やっぱり「パートナー」の存在ですよね。カギはそこだと思います。いかにパートナーが、産後の女性のからだや気持ちを知っているかが大事だと思います。そこがあるかないかで、全然違ってくるというか。
マドレボニータの吉田紫磨子さんと、夫婦ペアで参加して頂くような、産後の心身についてのお話会をやったことがあります。
女性は自分のことですし、当事者なので、母親学級や産院などでいろいろと聞いていますが、男性はそうではないですよね。吉村さんのように(笑)、意識が高ければいいですけど、意識はあっても、でもどうすればいいのみたいな…。やっぱりもっとパートナーにも聞いてもらいたいというか、もっと知ってほしいという思いがあります。
一般的には、男性は子どもが生まれると、「自分が一家の大黒柱だから、もっと稼がなくちゃ!」とか「ちゃんと養っていかなきゃ!」とかそういった思いがあると思うのですね。
それで残業したりすることもあると思うのですが、それよりも産後の女性は、パートナーに早く帰ってきてほしいし、ご飯を一緒に食べたり。夜が本当に大変なので。産後ぐらいは仕事を早く終えて、早く帰ってきてほしいと思いますね。
吉村:そうですね。もちろん男性の気持ちもわかりますが、でも赤ちゃんの子育ては、ある意味では24時間休みがありませんし、赤ちゃんのお世話で産後の女性はゆっくりと自分の時間をとることも、難しい場合がありますからね。トイレにだって行けなかったり。
三門:上のお子さんがいたりすると、お風呂とかも大変ですよね。いつも「どうしているんですか?」って上のお子さんがいる産後の方にはよく聞かれます。ゆっくり入れないし、自分の髪も洗えないし…。
赤ちゃんにおっぱいをあげながら、三歳四歳の子どものご飯だって作らなければいけないし、世話もしなければならないですし、本当に大変ですよね。夜泣きもするし。
吉村:うちの娘も夜泣きで大変な時期がありました。また、夜間の授乳は睡眠が分断されますから、寝ぼけまなこで授乳をするのも本当に大変です。
三門:大人の手がもう一つあることで、精神的にも肉体的にも産後の過ごし方が変わってくると思いますし、だいぶ違うと思うのですね。
だからそのへんの意識を、パートナーにも持ってもらいたいなと思います。なので、打ち合わせが土日でお休みであれば、パートナーにもこういったお話を聞いてほしいなと思っています。
吉村:男性は、そもそもお腹を大きくして自分で産むことは出来ませんし、自分の家庭のこととはいえ、当事者意識が薄い…というような側面は少しあるかもしれませんね。親としての責任感や親になる速度、あるいは感受性そのものが、女性とは違うというか。まして、自分のからだに変化があるわけではないので…。
でも最近は積極的に子育てに関わる方は増えてきているとは思います。とはいえ、やはり30代~40代で働き盛りだったりもしますからね。
三門:そうですね。定時退社ってあるじゃないですか。でも定時なのに早く帰れないということも、とくに営業職とかだとありますよね。私も経験があるので、わかりますけど。
毎日早く帰ってくることが無理だったら、せめて水曜日は早く帰ってくるとか、何曜日とか決めるとか。平日は難しいから、土日にもっと積極的に子育てに関わるという人もいるとは思いますが、やっぱり生活は毎日のことなので。たまに定時で早く帰ってきてくれるといいなと思います。でもそうなると、会社全体が意識改革する必要がありますよね。
「ファザーリングジャパン」などが、「イクボス」を育てようという活動もしていて、そういった企業も増えているとは思いますが。
吉村:そうですね。会社という「組織」に属している一サラリーマンでは、難しいこともありますからね。企業や社会全体が変わっていく必要はありますよね。