竹村絵実×吉村光弘 ダイアローグ8

 ●子供は自分の思い通りにならない

 

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吉村:じゃあ、産後の女性に対してお伝えしたいことはありますか?

 

竹村:産後の女性に対してお伝えしたいことも、妊婦さんに伝えたいことと共通しているのですが。

 

みなさんのご質問を伺っていて強く思うのですが、なんでこうならないんだろう?とか、自分の思い通りにならないということで、みなさん四苦八苦しているんですね。それはたぶん、「子供は自分のもの」みたいな意識がどこかであるからだと思うんです。

 

吉村:なるほど。そうかもしれませんね。

 

竹村:私自身も不思議な感覚だったのですが、妊娠中は赤ちゃんと「一心同体」なんですよね。自分の体の一部なので。ただ、生まれてくると、自分とは別の人格のものじゃないですか。それがなんか嬉しいようで、寂しいんですよ。

 

ずっとお腹の中にいたら、自分と一緒で自分のものなのに、生まれてきたら家族のものだったり、自分だけのものではなくなったり、一個人の性格もあって、だからもちろん私の思い通りにはならなくて。この子にはこの子の性格があって、この子の人格があるんだって思うと、寂しいような嬉しいような、って複雑な思いがしました。

 

吉村:寂しいような嬉しいような…

 

竹村:みなさんにお伝えしているのは、子供は一人の人間なので、どうしてうちの子は寝ないんだろう?とか、どうして言うことを聞かないんだろうではなくて、子ども自身の声に、もう少し耳を傾けてあげてださい、ということです。

 

当たり前のことなのですけど、意外とみなさん出来ていなくて、それをちょっと出来るようになるだけで、わりと育児が楽になったという方が多いので、自分にも言い聞かせつつ、それはお伝えしていますね。

 

産後も、子ども中心というか、でも何でもワガママを許すいうわけではないんですけど、「三つ子の魂百まで」ともいいますので、抱き癖がつくとか言わずに、たくさん抱っこしてあげてくださいということもお伝えしていますし、夜泣きが酷くてもおっぱいを頻繁にあげないといけなくても、長い人生の中のほんの数年ですので、体力が続く限り頑張ってくださいって。

 

もちろん、それでストレスが溜まってしまったりするのであれば、そういう時はヨガに来ていただいたり、ご主人とかご家族とか地域のヘルパーさんなどに頼ることも大事かなと思います。

 

聖路加産科クリニックだと、ショートステイ(産褥入院)もありますから、大変なときは専門の人に頼って、少しおさぼりすることもいいと思います。

 

吉村:そうですね。あんまり無理に頑張りすぎて、一人で思いつめて一生懸命になりすぎると息が詰まっちゃいますから、そういう時は人に頼ることも大事ですね。

 

竹村:あと産後の一、二ヶ月はゆっくりしてくださいってことは私もお伝えしています。目を使わずに、おさんどん(台所・掃除・洗濯)も全部、親とか旦那さんにお願いして、おっぱいをあげるのと、寝かしつけることだけはお母さんがやって。ご家族が近くにいれば、おむつ替えもやってもらってもいいと思います。家事もしばらくはご家族に甘えて、それ以降は子ども中心にやってくださいねって。

 

当たり前のことなんですけどね。当たり前のことを、みなさんあまり言われないというか。「ああ!」って気づくみたいな方が多いですね。最初はこんな当たり前のことを言っておこがましいし、いいのかな、おばあちゃまでもない私みたいな世代がこんなこと言って…と思ったのですけど、意外にみなさん「ああ、そっか…」って思ってくださるようで。

 

みなさんやっぱり、これまで自分の思い通りにできてきた人生で、子供が欲しいと思ったらいろいろ努力して子供を授かるとか、仕事も努力して手に入れるとか、いろいろやってきているので、子供も自分の思い通りになるんじゃないかと思っている方が多いのですが、でも「子供は思い通りにならないですよ」っていうことを言うと「ハっ!」って感じで気持ちも楽になるみたいです。私も自分に常々、言い聞かせていますけどね(笑)いまだに。はい。

 

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