竹村絵実×吉村光弘 ダイアローグ9

 ●3.11後の世界 ― 復興に向けて 

 

吉村:じゃあ、2011年に生まれた赤ちゃんやこれから生まれてくる赤ちゃんに、こんなふうに育って欲しいというようなメッセージはありますか? あるいはこんふうに育てて欲しいというような。

 

これも毎回お尋ねしているのですが、今年大きな地震があって…、いろいろな意味で大きな変化が多かれ少なかれみなさんの生活の中にもあったと思うんですね。大げさにいうと、それこそ生き方が変わったり、考え方が変わったりというような…。

 

で、今のこの状況の中で、お子さんを産んで育てていくっていうことは、今までにはなかったようなある種の困難があるというか、いろいろと考えなくちゃいけないこともあると思うんですね。今年だけではなくて、これからもますますそういう困難が出てくると思うのです。

 

そういった時代に新しい命としてこの世に生を受けた赤ちゃんや、これからの未来を担う子供たちに対して、どんなことを一番伝えたいですか? これも先ほどの誕生学の話みたいになってきますが。

 

竹村:ほんとうに3.11をきっかけに私自身もいろいろと考え方をすごく変えさせられたというか…。極端な話、家があるだけでも本当に幸せで、家族が一人でもまわりにいるだけでも、ほんとうに幸せなんだなというか。何もかも全部流されてしまったという人の話を聞くとそう思います…。

 

そういう意味でも、主人が亡くなったときに、「何で…なんで……自分が…?」って思う瞬間もあったのですけど、でも、3.11のときはご主人も子供もご両親も亡くされている方もいるじゃないですか。

 

吉村:ええ。

 

竹村:そういう方に比べれば、自分は、主人が亡くなったことはとても辛いけれど、近くに親も住んでいるし、子供もいるし、身近に助けてくれる人がいるんだと思って…。こういうことは、比べることではないのですが…もっと世の中にはほんとうに大変な人がいるんだと思って…。

 

辛い経験を少しでもプラスにかえていくには、おこがましいですけど、大変な人を私は助けていく立場になりたいなと…。ちょうど誕生学を勉強している時だったので…。そういうふうになりたかったので…。

 

吉村:ええ…。

 

竹村:3.11の津波で、産みたくても妊娠中に流されてしまった母親も、生まれたばかりで流されてしまった子も、生まれてきたのにご両親が津波で亡くなり、養護施設に入っている子もいるという現実を身近に見聞きし…。

 

もちろん、世界中にはもっと貧しい国や、大変な思いをしている人はいっぱいいるんでしょうけど、3.11ほど身近ではないじゃないですか。

 

吉村:そうですね。そういうことを知識として知ってはいても、リアルには想像も体感もできないですからね…。

 

竹村:ですが、3.11で同じ日本の中でそういった方がたくさんいるということを考えてみれば、自分が無事に赤ちゃんを産んだことや、生まれてきたことはすごく幸せなことですし、もちろん放射能で、すごい不安な時代に生まれてしまったなという気持ちもあるとは思うのですが、生まれてきただけでもこれ以上の幸せはないと私は思っているので。

 

助産師さんからお話を聞くと、ストレスで流産してしまう母子もいるらしいんですね。順調だったのに3.11のショックの流産や、死産も多かったり、帝王切開も多くなっているようなんです。そういう意味では、無事に妊娠が継続できて、無事に生まれてきたというのは素晴らしいことですよね。

 

ですから、こんな時代だからこそ、その子たちの分まで(っていうのもまたおこがましいような言い方ですけど)、大事に育っていって欲しいなと思いますね。

 

吉村:そうですね。赤ちゃんは未来の宝ですからね。

 

竹村:これから生まれてくる赤ちゃんも、今年生まれてきた赤ちゃんも「希望」だと思うんです。未来の大人なので。私達がこれから一緒にみんなで育てていって、復興に向けて少しでも助けになればいいなと思っています。 

 

続きを読む

 

● 放射能と同じように大事なこと

 

 

今日の予定
LINEで予約する 24h受付ネット予約 HOME